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活動レポート
2025.11.18 中高生が“自分の道”を見つけ前に進めるよう 親も子も気軽に相談できる存在に~認定NPO法人キッズドア~

東日本大震災の発生直後から子ども支援をスタートし、現在も宮城県仙台市に事務所を構え活動を続ける「認定NPO法人キッズドア」。仙台市と南三陸町を中心に、中高生の教育支援と復興支援を行なっています。

今回は、キッズドアで働く高杉美帆さんに、長期的に支える中で感じる子どもたちの変化や成長について伺いました。

認定NPO法人キッズドア 東北事業部 高杉美帆さん ※写真左

宮城県仙台市出身、埼玉・東京育ち。東日本大震災をきっかけに自身のルーツである東北で活動したいと考え2015年、仙台市へ移住。公立図書館司書を経て、2023年キッズドアへ入職。仙台教室責任者として中高生の無料学習支援に取り組む。司書時代に多様な地域課題に触れ、子育て支援に取り組んだことから、支援や情報を必要な人に届けるためにできることを模索中。

震災以降進む子育て世帯の「孤立」 中高生が安心して過ごせる場所に

私たちキッズドアは、東日本大震災から14年が経過した今も東北に事務所を構え、仙台市と近隣地域で暮らす中高生世代へ無料学習支援や体験活動の機会を提供しています。ハタチ基金の助成により、経済的な事情で塾や家庭教師等の有料教育サービスを受講することができない方への継続支援が実現できています。

教室に通う生徒の多くは仙台市で暮らしています。震災以降、他の地域からの移住者も増え、多忙な子育て世帯ほど、地域との関係が希薄で孤立しているように感じます。特にひとり親家庭は身近に頼れる人がおらず、保護者が子育てや生活の悩みを一人で抱えこんでいたり、その結果悪循環が生まれているケースなどが見受けられます。

初回の親子面談では、子どもの好きなことや将来の夢など、勉強以外のお話も伺います。反抗期で親子の会話が成立しなかったり、将来への不安が強い状態で面談をする場合もありますが、スタッフが話を聞くだけで家庭内で煮詰まっていた状態が和らぎます。進学に向けて必要なお金の話など、気軽に相談できる場所が案外少ないのかもしれません。

学習会に通う中高生の中には学校を休みがちであったり、不登校の時期があり勉強が分からなくなってしまっているという子どももいます。日々の学習会では子どもと雑談しながら、気になる様子があればじっくり話を聞き一緒に考えます。親でも学校の先生でもない大人として身近にいてくれる大学生・社会人ボランティアの皆さんの応援が、どの子にとっても一歩を踏み出す際の大きな力となっています。

勉強面のサポートはもちろん、中高生が安心して過ごせる居場所でありたいと日々考えています。

高等部学習会の様子。大学生や社会人ボランティアの方々は、勉強以外の相談にも乗ってくださる心強い味方です。

多様な体験の機会を通して育む 生きる力

勉強以外でも、地域の方々の協力をいただきながら、様々な体験の機会を提供しています。今年は高校生向けに「ChatGPTと会話するプログラミング教室」を開催しました。4日間の連続講座ではプログラミングの基本を学び、各自がオリジナルのアプリ制作にチャレンジしました。

仙台駅直結のショッピングセンター&ホテルの職場見学会。ショッピングセンターの裏側を社員の方が案内してくださっている様子。

体験活動への参加をきっかけに、普段の学習会では話す機会が少ない子ども同士の交流が生まれました。同じ教室で共に励む仲間ができると、勉強へのモチベーションが自然と高まります。勇気を出して参加すると、新しい友達ができたり、次の新しいチャレンジにも積極的になるなどの変化が生まれます。自らチャンスをつかもうとする姿は頼もしく、彼らの成長を嬉しく見守っています。

また、キッズドアでは、東京と地域拠点が連携しながら、広域サポートを実現しています。オンラインを活用した学習支援はもちろん、一部の無料体験活動は遠方からも参加しやすいよう東京までの交通費を補助する等の工夫をしています。昨年度は仙台と東京の子どもたちが一緒になってキャンプ体験を行いました。キャンプの後、仙台市の震災遺構へ立ち寄る等、東京の子どもたちにとっても貴重な機会を作ることができました。

長期で支援することで見えてくる子どもたちの成長

長期で支援をしてきたことで、キッズドアの卒業生がボランティアとして後輩のために活動をすることが増えてきました。そんな姿を見ると、良い循環が生まれていると感じます。子ども連れで教室へ顔を出してくれる卒業生や、以前ボランティアをしていた方がふらっと教室へ立ち寄ることもあります。今年の9月には震災直後に支援した子どもが夢を叶えミュージカルに出演することになり、観劇にご招待いただきました。キッズドアが長期にわたり東北で活動を続ける意義を実感した嬉しい出来事でした。

学習会ではカードゲーム等、楽しく交流する時間も大切にしている。中学生たちがゲームをしている様子。

キッズドアの学習会に通った子どもは様々な経験を持つボランティアとの交流を通じて、徐々に初対面の人とも緊張せず話せるようになっていきます。中高生世代の子どもにとって、将来の選択肢を広げる上で、かけがえのない経験となることでしょう。

最近は高校進学後に悩みを抱える子が増えています。多様な学び方を選べる時代だからこそ、自分の道を見つけ前へ進むための支援が必要です。

すべての子どもが夢を叶えることができる社会を目指して、今後もあらゆる可能性を皆さんと一緒に探っていきたいと考えています。

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