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活動レポート
2026.08.17 放課後の学校に、安心してSOSを出せる居場所を「高校内居場所カフェ」~認定NPO法人Switch~

今年度から新たに助成先団体に加わった「認定NPO法人Switch」。宮城県仙台市・石巻市を拠点に、様々な背景をもつ若者の「働く」「学ぶ」を伴走し支えています。今回は、高校の中に小さなカフェスペースを設け、放課後の居場所として活動している「高校内居場所カフェ」の取り組みをご紹介します。このカフェで過ごした高校生には、どのような変化が起きているのでしょうか?認定NPO法人Switchの田口雄太さんに伺いました。

認定NPO法人Switch 田口雄太さん

2011年に認定NPO法人Switchに参画。仙台で就労支援員として現場に入って以降、石巻の自立訓練事業所の管理者や、若者総合相談センターの相談責任者などを担当。その後、仙台・石巻地域で若者支援を行ってきました。現在は法人マネージャーとして全体の統括を行いながら、石巻エリアの責任者および若者の就労支援部門の管理者として、現場にも入りながら、利用者の実態に即した「途切れない支援体制」の構築に注力している。

認定NPO法人Switchについて

「未来ある若者が希望を持ち、多様な価値観を尊重し合えるwell-beingな社会を目指す」というビジョンのもと、仙台・石巻地域を拠点に活動。若者一人ひとりが持つ力や強みをいかした「働く・学び」の実現に伴走することをミッションに掲げ、就労移行支援や自立訓練などの障害福祉サービス、若者自立・就労支援事業(ユースPASSO、石巻NOTE)を展開している。さらに、制度のはざまで支援が届きにくい課題にも向き合いながら、宮城県内の高校における「高校内居場所カフェ」の運営を通じて予防的なアウトリーチにも注力し、学校・行政・福祉が一体となった切れ目のない支援ネットワークを構築している。

東日本大震災の爪痕が影響する 若者の孤立や不安感

東日本大震災から15年が経過し、震災当時は目に見えて顕著だった課題が、見えにくい形へと複雑化しています。地域のコミュニティ構造の変化や家庭環境の課題といった震災の爪痕は、社会の底流に残り続けており、その中で育った現在の高校生世代は、「将来が描けない」「周囲に相談できる大人がいない」といった孤立や漠然とした不安を抱えやすくなっています。これが、卒業後の進路未定や早期離職といった具体的なつまずきに直結しているのが現状です。

また、15年以上支援を続ける中で、社会構造の大きな課題に気づきました。子どもや高齢者の生活圏においては、保育や教育、介護といった形で、困ったときには頼ることができる福祉が身近に存在する状態がつくられています。

しかし、大人の世界においては、身近に福祉は存在しておらず、本人が自力でSOSを出し、専門機関のドアを叩かなければ支援にたどり着けません。学校を卒業し、大人の世界へ踏み出す移行期にある若者にとって、この落差は非常に大きな壁となり、孤立を生む原因となっています。

評価されずに 安心していられる場所「高校内居場所カフェ」

そうした生徒には、学校でも家庭でもない「安心していられる場所」が必要です。私たちは、宮城県内の高校で「高校内居場所カフェ(NOTECafe)」を運営しています。放課後の教室に小さなカフェスペースを設け、本を読んでも、ゲームをしてもOK。用事がなくても居られる空間です。学校と協議を重ね、にぎやかな空間と静かな空間を分けたり、カップラーメンを提供したりと「行きやすい」環境を整える等、各校の生徒の状況に合わせた形で開催しています。

今年度よりハタチ基金から助成のおかげで、宮城県内の高校9校での「高校内居場所カフェ」を、年間を通じて定期開催する基盤ができました。

お菓子やカードゲームを囲みながら自然と会話が生まれる高校内居場所カフェ『NOTEcafé』の日常風景です。昨年度は宮城県内9校で年間46回開催し、延べ727名の生徒が訪れた。

「評価されない、安心できる大人との関わり」を日常の中につくることで、小さなSOSを早期にキャッチし、必要な生徒は個別の進路相談へとつなげます。さらに、卒業してもいつでも相談できる連絡先を記載した「お守りカード」や、「いろいろな進路選択ハンドブック」の配布を行い、卒業後も途切れることなく地域に相談ができる「切れ目のない支援体制」を構築しています。

学校の中に成績や態度で「評価されない場」「何者でもなくいられる空間」があることで、生徒たちに心の余裕が生まれていると感じられます。最初は一人で様子を伺っていた生徒も、お菓子を食べたりカードゲームを共にする中で自然と会話が広がり、少しずつ本音を打ち明けてくれるようになりました。この安心感を土台にすることで、自らの希望を言語化し、主体的に相談へ踏み出せる前向きな変化が起きています。

高校内居場所カフェ『NOTEcafé』の一コマ。なぜか狭いところが好きな高校生たち。

卒業後も続く 切れ目のない支援

高校内居場所カフェが、制度の枠組みに乗り切れない若者たちの重要な入り口として確実に機能していると感じています。例えば、複雑な家族関係に悩み将来への意欲を失いかけていた生徒が、カフェでスタッフと関係性を築いたことをきっかけに、若者自立・就労支援事業「石巻NOTE」のプログラムを利用するような状況が生まれています。今年度も既に、何名かの生徒がカフェを入り口に、石巻NOTEに接続する等、学生時代は接続しにくいと言われている地域資源と接続し、学校だけでは満たせないニーズの解消の手段として活用しています。

在学中から学校の中に地域の大人が入り込み、卒業後も大人の世界で伴走し続けられるような「平時の支援」の仕組みを社会に組み込んでおくことが何より重要だと痛感しています。

高校内居場所カフェ『NOTEcafé』のスタッフ。高校生が撮影してくれました。

目に見える復興が進んだ今も、家庭環境の複雑化や約6人に1人が孤独を感じているという見えにくい課題を抱える若者は確実に存在します。事実、宮城県における小中高の不登校生徒の割合は全国的にも非常に高い水準にあります。震災との直接的な因果関係は明確ではありませんが、この地域で育った子どもたちが何らかの生きづらさを抱えやすい状況があることは間違いありません。彼らが何度つまずいてもやり直せる「地域に根ざした持続可能な若者支援の基盤」を確固たるものとして残していくために、今まさに継続的な支援が不可欠だと感じています。

今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします。


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