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活動レポート
2022.12.22 震災を経験したかつての子どもたちを中心に 岩手県宮古市を活気ある町へと変えてゆく【NPO法人みやっこベース】

2022年度助成先に新しく加わった団体をご紹介する連載シリーズ。

今回は、岩手県宮古市で活動をする「NPO法人みやっこベース」です。
東日本大震災をきっかけに、宮古市では「地元の復興の力になりたい」という気持ちが若者たちの間で生まれ、高校生を中心とする地元の若者たちによるボランティア活動が宮古市の復旧期を支えました。
宮古のことを知って地域への愛着を持つ若者を増やすことで、宮古の将来を支えることにも繋がると考え、子どもたちの成長の場と機会を作る活動を行っています。

みやっこベースの早川輝さんより、活動紹介とメッセージが届きましたのでご紹介します。

早川輝さん(はやかわあきら・写真右)

NPO法人みやっこベース理事長。福岡県北九州市出身。
大学卒業後、2年間の海外生活を経て帰国した直後に東日本大震災が発生。2011年6月に個人ボランティアとして岩手県宮古市を訪れ、災害ボランティア活動を開始。活動の一環として子どもの居場所づくりや学習支援などを行う中で、地元の子どもたちが復興に関わる機会の必要性を感じ、2013年前身となる任意団体「ユースみやっこベース」を設立。以降10年間にわたり、宮古市の子どもや若者が自分らしく育ち、活躍できる街づくりを目指して活動を続けている。

コロナ禍と震災から11年 再び生まれている町の閉塞的な空気 

宮古は、海と山に囲まれた地形のため、震災前から町全体に閉鎖的な雰囲気があったと聞いていました。特に震災直前には経済的な停滞感もあったようです。
震災は宮古の人たちにとって悲しく辛い出来事でしたが、一方で、地域に向き合う機会にも繋がり、復旧復興を通して新たな希望を持つきっかけにもなったと話す方もいます。私も当時はボランティアとして外から入りましたが、世界中からもたくさんの支援が届く中、復興に向けて心を一つにし、大きなエネルギーを町全体で共有しているように感じていました。みやっこベースの設立直後に関わった高校生たちは、自ら被災しながらも地元の復興や活性化に向けたアイデアを仲間たちと楽しそうに考え、行動に移しながら成長していきました。

現在は、復興に向けた前向きなエネルギーは消え、以前のような閉塞的な雰囲気が立ち込めているように感じています。震災から11年が過ぎ、さらには新型コロナウイルスによる世界の変化や経済的な打撃も相まって、この地に希望を見出しにくい状況になっているのかもしれません。地域に住む大人たちが前向きな姿勢を持てず、魅力的な姿を見せる機会が減ることで、子どもたちの地域への希望を育みづらい状況をますます作ってしまうのではないかと危惧しています。

宮古で生きる大人とのふれあいを通して 地域への希望を育む

私たちはハタチ基金のご寄付で、中高生向けのフリースペース「みやっこハウス」を作り運営しています。岩手県宮古市中心部の商店街の空き店舗を改装した、子どもたちがいつでも誰でも気軽に集うことができる居場所です。
みやっこハウスでは、宮古への理解を深める情報や最新の話題に触れることができる情報掲示を行ったり、宮古で楽しく前向きに暮らしている人や様々な活動を展開している人たちと出会うことができるイベントを開催しています。

マイプロジェクトのテーマを考える高校生(改装前のみやっこハウス)

家や学校ではない第三の居場所で、宮古で働き暮らす大人と関わる機会が増えることで、子どもたちの視野が広がり、地域への希望が育まれる機会となることを目指しています。

みやっこベースでは、市内の高校の「総合的な探究の時間」の授業のサポートも行っていますが、先日、ある嬉しい出来事がありました。授業では言葉数が少なく、あまり明るい表情を見ることがなかった生徒がいました。自分の興味関心や将来の目標もうまく言葉に出せないようでした。その生徒が、商店街のお祭りの日にみやっこハウスに来てくれて、その場にいた大学生と会話を重ねていく中で、みるみるうちに明るく饒舌に。家でもなく学校でもないみやっこハウスでの交流が続いたのち、授業の中でも自分が興味関心を持っていることを自ら口に出せるようになり、前向きな様子が見て取れるようになったのです。

現在、震災直後に中高生だった20代の若者たちが、宮古市にUターンで戻ってくることが増えています。地域に住む子どもたちが、こうした若者たちとも出会い交流する機会も作っていき、様々な可能性を見出して自分の人生を切り開くこと、前向きな希望を持つきっかけを作っていきたいです。

「大人の自由研究」地域の大人たちが集まって自分でテーマを決めて探究する

寄付者の皆さんへのメッセージ

東日本大震災から間もなく12年が経とうとしていますが、変わらず関心を寄せていただき、また温かいご支援をいただき、誠にありがとうございます。
干支が一回りする12年間。最初に出会った高校生たちは20代後半となり、様々なライフステージを迎えながらも、豊かな暮らしと宮古のより良い未来のために行動しています。そんな若者たちの背中を見て、現在の子どもたちも希望や意志を育んでくれることを目指して活動を続けています。前向きな希望の連鎖が続いていくよう、今後も応援していただけると幸いです。

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