
2022.11.21
東日本大震災の発生直後、避難所での遊び場づくりが活動の原点となった「NPO法人にじいろクレヨン」現在も、宮城県石巻市を拠点に子どもたちの居場所づくりを続けています。
今回は、理事長の柴田滋紀さんに、長きにわたる活動の中で見えてきた、子どもたちの心を育むために必要なことを伺いました。
NPO法人にじいろクレヨン 理事長 柴田滋紀(しばた しげき)さん
画家。お絵かき教室「ゴコッカン」運営。石巻市出身で自身も被災。避難所生活を送る中、子どもたちが大人に気を遣って思い切り遊べない様子を目の当たりにして、2011年3月22日に「石巻こども避難所クラブ」を結成。安心してのびのびと過ごせる遊び場づくりを行った。その後「にじいろクレヨン」と改称し、現在は、幼児や放課後の小学生など、どんな子どもでも利用できる居場所をつくっている。子どもたちの笑顔や生き生きとした姿、体験を通して得られる「原体験や記憶」を育むことを大切にしている。
震災で失われた 子どもたちにとっての“安心安全な居場所”
東日本大震災後の石巻地域では、経済的格差が生じやすく、それが体験の格差を生み出しています。また、生活環境の変化や地域の大人たちとの関係が希薄化したことで、愛着形成が弱くなる子どもも見られます。日常的な安心感や豊かな体験が不足していることは、大きな課題です。例えば、子ども会がなくなってしまい、子どもと地域との接点が失われてしまったこともあげられます。
私たちは、安心して過ごせる居場所を作り続け、制作活動や体験活動を通じて子どもたちの主体性を引き出すことを大切にしています。安心安全な環境で、さまざまな人と関わりながら表現する経験を重ねることで、自己肯定感や人とのつながりを深めています。
ハタチ基金から助成を受けることで、経済的な制約に左右されず、安心して過ごせる居場所づくりを安定的に続けられています。制作活動や体験活動を中心に、子どもたちが自分らしさを発揮できる時間を確保し、地域や学校と連携しながら活動を展開しています。
活動を続ける中で、子どもたちだけでなく、地域の多様な人々が参加する機会が増えていきました。地域や学校から「頼り、頼られる存在」として認識され、子どもたちも自分たちの居場所を誇りに思えるようになっています。
言葉の壁を越えた表現や遊び 他者を受け入れ 柔軟な発想が生まれる
近年は海外でも活動を広げ、ドイツやフランスで活動報告会を開催しました。特にフランスでは、紙版画を使ったアートワークショップを行い、日本から高校生も帯同。文化交流を通して、子どもたちに国際的な視野を持つ機会を提供できました。
フランスの子どもたちとの交流では、言葉の壁を越えて表現や遊びを共有し、自信をつける子どもたちの姿が見られました。異文化交流は、相手を理解しようとする姿勢や柔軟な発想を引き出し、子どもたちの成長を促しています。
こうした海外活動の経験や交流を通して培ったノウハウが、石巻の子どもたちだけではなく、今後、日本の他地域での支援や文化活動にも応用できると感じています。
長期的に 安心できる場所を提供し続ける必要性
長く活動を続ける中で、子どもたちが常に評価の目にさらされ、息苦しさを感じている現状が見えてきました。その一方で、評価されない安全な場を持つことで、子どもたちの笑顔や挑戦する意欲が引き出されることを実感しています。
夏休みなど長期休暇では、学校という日常の場を失うことで、暴言や暴力など荒れた行動を見せる子どもが増える傾向にあります。居場所の喪失や、場合によってはネグレクトの表れかもしれません。だからこそ、長期的に安心できる場所を提供し続ける必要があると考えております。今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします。