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2026.10.19 人口1万人のまちから広がる「支え合いの循環」——岩手町の10代が“自分らしく”いられる居場所をつくる~ NPO法人miraito~

東日本大震災から15年が経過した今、被災地域では人口減少の波が加速しています。人口約1万人の岩手県岩手町も、そうした地域のひとつです。

このまちで、10代の若者支援に取り組む「NPO法人miraito」。彼らが目指すのは、たとえ人口が減っても、子どもたちが孤立せず希望を持てる“持続可能な仕組み”。10代という多感な時期に、さまざまな背景を持つ若者たちが“自分らしく”踏み出していくためには、どんな支援が必要なのか。

現場の取り組みと、支援を通じて変化していく子どもたちのストーリーをお届けします。

NPO法人miraito 理事長 上田彩果さん

2014年、大学時代に東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市で、中高生と大学生が一緒に地域の未来を考え、行動する「高田と僕らの未来開拓プロジェクト」を立ち上げる。そこで出会った中高生たちと活動する中で、「若者には、自分自身や地域の未来について考えたり挑戦できる場が必要」と感じるように。以降、2020年まで、陸前高田市を中心に中高生約350名を直接支援し、その後も岩手県内の若者支援へと活動を広げる。2023年、10代の居場所「いわてユースセンターミライト」開所。2025年、NPO法人miraito設立。

NPO法人miraitoについて

LGBTQ、不登校・長期欠席、発達特性や障害、家庭環境、経済的困難など、さまざまな背景を持つ10代が、「自分らしさを諦めなくて大丈夫」と思える地域をつくることを目指している。主な活動は、10代の若者の「居場所」と「挑戦・学び」つくる活動を、岩手・県北地域を中心に展開。活動拠点となる「いわてユースセンターミライト」は、学校でも家庭でもない第三の居場所として、困っている子もそうでない子も、中高生が放課後や休日に立ち寄り思い思いに過ごせる場所となっている。また、中高生が地域で自分の興味関心をもとにプロジェクトを実践する、探究・人材育成事業を実施。県内3自治体で、60もの中高生主体のプロジェクトが生まれた。若者を地域全体で支えていくための人や仕組みそのものをつくることを大切にして活動をしている。

人口減少が加速し失われた 10代の機会と居場所

東日本大震災後、岩手県沿岸部には全国から多くの人や団体が入り、子ども・若者支援や教育の取り組みが生まれました。しかし時間が経つにつれて支援団体が撤退したり、進学や就職で地域を離れる若者が増えています。さらに、miraitoの拠点がある内陸部では、そもそも10代を対象とする民間の支援拠点やNPOが非常に少ない状況が続いています。岩手町では、10代を主な対象として継続的に支援するNPOはmiraitoのみです。近隣自治体でも同様に、学校や家庭以外で中高生が日常的に立ち寄り、年齢の近い大学生や若手社会人と話すことのできる場所は限られています。中高生から、「大学生と話したことがほとんどない」「学校の先生と家族以外の大人と話す機会がない」という声を聞くこともあります。

子ども・若者の課題は、「困っている子」と「困っていない子」にきれいに分けられるものではないと感じています。学校には通えている。家庭でも大きな問題は起きていない。でも、「自分には価値がない」「ここにいても未来がない」と感じている若者はいます。地方では、人口減少によって学校や地域活動の選択肢が減り、同世代や年齢の近い先輩と出会う機会も少なくなっています。

一方で、震災後の活動の中で育った大学生や若手社会人の中には、「地元のために何かしたい」「自分たちが中高生の時にしてもらったことを、次の世代に返したい」と考えている人が少なくありません。

けれども、地域を離れて暮らす彼らが関わり続ける「役割」や「出番」がありません。

私たちは、震災後につくられた人と人とのつながりや、そこで育った若者という大切な資源が、時間の経過とともに失われてしまうことも、震災15年を迎えた今の大きな課題だと考えています。

「何もなくても行っていい居場所」 10代を支える仕組みづくり

明確な診断や制度の対象にはならないけれど、生きづらさや孤立感を抱えている10代は、支援からこぼれやすい存在です。こうした「明確な困難として可視化されにくい10代」が今後増える可能性を課題として考えています。だからこそ、問題が大きくなってから支援するだけではなく、「何もなくても行っていい場所」が必要です。

「そうだ、miraitoに行こう」

そんなふうに、学校や家と同じくらい自然な選択肢として、ユースセンターが存在する状態をつくりたいと思っています。

ユースセンターで卓球を楽しむ、ユースワーカーと中学生。

私たちが目指しているのは、「すべての支援をmiraitoのスタッフが行う」ことではありません。地域に住む大人、大学生、地域外に進学した若者、かつて支援を受けた若者など、さまざまな人が無理のない形で10代に関わることのできる仕組みをつくりたいと考えています。

その中心にあるのが、「関係人口型ユースワーカー」という考え方です。

例えば、東京や仙台の大学へ進学した岩手出身の若者が、月に1回オンラインで中高生の相談に乗る。夏休みに帰省した時にはユースセンターで一緒に活動する。中高生のプロジェクトをオンラインで伴走する。

必ずしも地域に住み続けなくても、地域の子ども・若者を支える側として関わることはできます。そのため今年度は、研修だけで終わるのではなく、「知る→やってみる→振り返る→また関わる」という流れをつくり、若者自身が徐々にユースワーカーとして成長していく仕組みを整えています。

偏愛を語り合うユースワーカーと高校生。

重要なのは、支援する側とされる側を固定しないことです。10代の時に誰かに支えてもらった人が大学生になり、次の10代の話を聴く。その10代が数年後、今度は誰かの挑戦を応援をする。「育てられた人が、次の誰かを育てる側に回る循環」を、岩手の地域につくっていきたいと考えています。

この仕組みづくりの原点は、2014年から陸前高田で取り組んだ「高田と僕らの未来開拓プロジェクト」にあります。中高生が大学生と一緒に、自分自身や地域について考え、それぞれのプロジェクトを実践してきました。当時中高生だった参加者の中には、高校卒業後に地域外の大学へ進学した人も多くいます。

通常であれば、進学を機に関係が途切れてしまうことも少なくありません。しかし、大学進学後や就職後も、中高生の伴走者や企画運営者として活動に戻ってくる若者が生まれたのです。最終的には、こうしたアルムナイが約20名にまで広がりました。

この経験から、私たちは「人口が減っても、若者が地域外に出ても、関係まで途切れることはない」と学びました。むしろ地域を離れたからこそ持てる視点や経験があります。

miraitoで取り組んでいる「関係人口型ユース支援」は、震災後の陸前高田で若者たち自身が見せてくれた循環をモデルとしています。

小さな変化の積み重ねで 大きく羽ばたくことができる

今年度は、ハタチ基金の助成によって、活動の「回数」を増やすだけではなく、数年後も地域に若者支援を残すための人材と組織の基盤をつくることができています。ご支援をいただきありがとうございます。

miraitoの活動を続ける中で感じているのは、若者の変化は、必ずしも大きな成果や受賞という形だけで現れるわけではないということです。

最初は「自分にはやりたいことなんてない」と話していた子が、誰かの活動を見て「それ面白そう」と興味も持つ。自分のアイデアを人前で話すことに抵抗があった子が、イベントでは自分のブースに立って来場者へ説明する。最初はスタッフや大学生と一緒に活動していた子が、次第に参加者へ声を掛ける側になる。こうした小さな変化をたくさん見てきました。

中高生が「自分の関心や違和感を言葉にして行動する」経験を重ねることで、自己肯定感や自己決定力、地域への誇りにつながる変化が見られています。大学生にとっても、伴走する経験を通して、人とのつながりの大切さに気づいたり、地域への愛着が深まり、進路を見直すといった変化も生まれています。

子どもの成長には時間がかかります。そのため、支援の成果もすぐには見えません。一つのイベントで人生が変わるわけではありません。高校生の時にはほとんど話さなかった子が、数年が経ち大学生になったときに「あの時のことを覚えています」と連絡をくれることもあります。

数年前、陸前高田の高校生が教えてくれた言葉が深く心に刻まれています。

「今あるものに誇りを持ちたい」。

震災で多くのものを失った高校生が口にした言葉でした。

この感覚は、被災地域だけのものではありません。

人口減少が進む地方に暮らす若者が、「こんな町には何もない」と自分の地域を諦めるのではなく、「ここにも大切なものがある」「自分たちが新しい未来をつくっていい」と思えること。そのための人や場所を残し続けることが、これからのこども若者支援に必要だと考えています。

現在、岩手町とmiraitoでは、ふるさと納税を活用したガバメントクラウドファンディングにも挑戦しています。寄付を単に活動資金として集めるのではなく、若者の小さな挑戦を地域全体で応援し、一人の「やってみたい」が次の誰かの挑戦につながっていく循環をつくることを目指しています。今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします。

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NPO法人miraitoについて詳しくはこちらのnoteをご覧ください。

岩手町とmiraitoのふるさと納税を活用したガバメントクラウドファンディングに関してはこちらをご覧ください。