ハタチ基金の助成先団体のひとつ、認定NPO法人キッズドア。震災の影響を受けた世帯や、経済的に困窮している世帯の中高生を対象に無料学習会を開催する活動を中心に、どんな家庭環境の子どもたちでも夢や希望を持てるように支えています。今回は、東日本大震災発生から10年に渡り支援を続ける中で、被災した地域が当時とは違った課題を抱えている状況を、現場スタッフからの声をもとにお届けします。
■大学生との触れ合いは将来の夢を描くきっかけになる
キッズドアでは、ハタチ基金からの支援を受け、宮城県南三陸町と仙台市を中心とした無料学習会を開催しています。これまで、10年近く支援を続けてきましたが、当時の状況とは変わってきています。
南三陸町で開催している中学生対象の無料学習会は、仙台から大学生スタッフを4~5名ほど同行し、町内の会場をお借りして実施しています。
学習会では、勉強を教えてもらうだけでなく、日常生活の悩みや将来のこと、キャリアデザインを相談できる存在として、大学生スタッフの存在価値は大きなものとなっています。
震災から10年を経て、南三陸を始めとする被災した地域の人口減少と過疎化は、深刻な問題となっています。子どもの数そのものが急速に減少している上に、その多くは高校卒業後、地元を離れて行きます。そのため、日常で大学生と触れる機会が少なく、キッズドアが中学生の学習支援活動を行う中で、初めて大学生と対面する子どももいます。放課後に学習会に来て大学生と話す中で、進路を具体的に考えたり、将来の夢を描けるようになる子どももいるため、親でもなく学校の先生でもない、子どもたちに距離が近い大学生は貴重な存在です。
そんな中、先日、中学の時から学習会に参加していた高校生から、公務員試験合格の報告がありました。一人の子どもの成長を見続けることの大切さ、成長の喜びを改めて実感することができました。
■どんな行政の支援の対象を外れた親子も支える
東北地方の中心都市である仙台では、行政の支援の対象から外れてしまったり、支援に繋がらないケースも多いというお話もよく耳にします。
そんな中、先日ひとり親家庭専門相談員をしているハローワークの方から嬉しいご報告がありました。
昨日、キッズドアさんで応援していただいていたお母さんがお見えになりました。
今春4月にキッズドアさんの情報を提供させていただいた後、お子さんだけではなくお母さんもキッズドアさんに繋がられたお母さんです。 親子ともどもキッズドアさんで手厚い応援をしていただいたおかげで、お子さんが大学に合格されたといったご報告でいらしてくださいました。「今、入学金を納めてきたんです!!」と、嬉しそうに振り込み書を見せてくださいました。こんな幸せそうな笑顔を見せていただけたのは、キッズドアさんのおかげです。心からお礼申し上げます。本当にありがとうございます!
困窮や孤立により情報も無く、途方に暮れている親子が、私たちの活動に参加することで、明るく前向きに次のステージに進めるようになったという、とても嬉しい出来事でした。
■困っている子どもの可能性をつぶさないために
この活動を続けて行くためにも、支援される側、支援する側という一方的な関係ではなく、双方にとって良さを感じられる場所、存在として「キッズドア」という器をさらに充実していきたいと考えています。
大学生・社会人・シニア、それぞれのボランティアにとっても、居心地が良く、やりがいを感じられる場所であり、多世代の様々な人と触れ合える場所として、器の入り口を広く低く、身近に関われる存在にしていきたいです。
子どもたちが経済格差や地域的な格差などで夢や希望を諦めてしまわないよう、子どもたちの未来のために、これからも皆さまのご支援をお願いします。
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