2020.03.05
2024年3月8日、東日本大震災から13年目の節目の日に、ハタチ基金活動報告会を開催しました。日頃からハタチ基金を支えてくださっている寄付者の皆さんにご参加いただき、代表理事の今村と、震災直後から東北で活動を続ける助成先団体の皆さんとともに、この1年の報告をさせていただきました。
2024年の初めに石川県の能登半島で大きな震災があったこともあり、改めて災害の恐ろしさと支援の難しさを突きつけられている昨今。10年以上もの間、東北被災地で子どもたちを支える中で見えてきた“私たちができる支援”について、参加者の皆さんと一緒に考えてみる会となりました。活動報告会の一部をご紹介します。
はじめに、ハタチ基金ディレクター 相内洋輔より、今年度皆さんからいただいたご寄付を14の助成先団体に届け、子ども支援に活用してもらったことをご報告。寄付者の皆さんに、感謝の気持ちをお伝えしました。
今回は、2011年3月に宮城県石巻市の避難所で子どもたちの遊び場づくりをスタートさせ、今もなお活動を続ける「にじいろクレヨン」より代表の柴田滋紀さん。同じく2011年3月から東北での支援をスタートさせ、宮城県で学習支援や体験活動を続ける「キッズドア」より對馬良美さんが参加。活動内容の報告とともに、パネルディスカッションを行いました。
両団体ともに継続的に活動を続けていることを踏まえ、今村は、支援を継続的に続ける必要性について話しました。
震災直後に家族や友人を亡くしたり、自宅を失ってつらい思いをした子どもたちが、当時東北中にいました。そんな子たちが、時間が経ってから再びつらいと思ったときに逃げ込める場所はあるんだろうか。たとえ家族を失っても、毎日のように過ごしたいと思える場所があって、第三者がその子を支えてくれるように。そんな状況を、東北のみならず被災地全てにつくる必要があるんじゃないか。それは短期的なお金の支援では難しく、継続して子どもたちを応援していく仕組みとその担い手が必要なんじゃないか。当時私はそう思いました。そこから、震災を経験しても笑顔でハタチを迎えられるようにといったコンセプトで、ハタチ基金と名づけこの団体をつくりました。マンスリーサポーターになっていただく方々を“呼びかけ人”と呼ばせていただいて、たくさんの方々に寄付で応援していただいています。私たちが責任を持って、信頼できる方々にその寄付金を届けて使っていただくことで、子どもたちを継続して応援ができるような仕組みをつくりました。
本日はお忙しい中、活動報告会にご参加いただき心より感謝を申し上げます。
この日今村は、能登半島の被災地より報告会に参加していました。東日本大震災で、たくさんの子ども支援団体が東北で子どもの居場所づくりや学習支援を長期的に続けたことが、今の被災地支援を前進させていると話しました。
2023年、こども家庭庁が設置され、子どもの居場所をどうするのか、きちんと国で議論されることになりました。これは被災地支援にとっても画期的なことです。災害を経験した子どもたちにとってもちゃんと居場所がある状態を目指しましょうと、示されているんですね。そうなると、子どもの居場所をつくることに対して、国が予算を下ろしてくれることになるんです。これは、今日参加してくださった2つの団体をはじめ、ハタチ基金の助成先団体や東北でチームをつくって挑んだ支援団体の成果だと思っています。東北の震災経験がレガシーとなっている、すごく重要な事例の一つですね。
そしてもう一つ。ハタチ基金の助成先団体や東北の支援団体に支えられて大人になった当時の子どもたちが今、能登の被災地で子どもたちを支えているという話も報告しました。
東北で被災した当時の子どもたちが、今能登にやってきて様々な形で子どもたちを支援しています。つい先日も、震災を経験した子たちが、能登で被災している中高生と語る事業も始まったんです。自宅も被災して、家族もばらばらに暮らすことになったり。親同士が今後のことでもめたり。自分の将来をあきらめそうになったり。子どもたちを取り巻く環境には課題がいっぱいです。
東北であのとき自分が経験したことを伝えることで、ここからの未来を作っていく中での一つの励みになるようにと取り組んでいる子たちを見ていると感慨深いものがあります。ハタチ基金っていうのは、何が正解かわからない中でみんなでやっているのですが、これは絶対に意義がある取り組みになっているなと実感できる瞬間にもなりました。
最後に、震災が起きてから日常を取り戻すまでにはどのくらいの時間がかかるのか。日常を取り戻すにはどのような支援が必要なのかを、参加者の皆さんの経験からお話しいただきました。
(にじいろクレヨン 柴田さん)
5年後6年後にようやく震災のつらい体験を話すことができるようになったという子が私の周りに何人かいました。当時高校生だった子が20歳になるまで話せていなかったりとか。ずっと抱えて生きていたのかなと。誰か話せる相手と出会えたときが、口に出すタイミングになるんでしょうね。寄り添って話を聞く大人がいることで、自分の気持ちをさらけ出せる“日常”を取り戻せるのかもしれません。楽しい時間や、信頼できる大人がいる環境をつくることが必要な支援なのかなと思います。
(キッズドア 對馬さん)
日常っていう言葉は、人それぞれ捉え方にすごく差があると思うんですよね。避難をして元の家に戻れば日常に戻ったと言えるのか。コミュニティがなくなってしまったりとか、家族の問題が発生したりとかいろんなことがあるので、物理的に同じ被害を受けたとしても、人の感じ方には個人差があって様々です。だからこそ、長く支援を続ければ子どもたちのちょっとした変化にも気づけますし、それが大切だと思っています。私たちの体験イベントも、参加者の皆さんから「来年もあるのかな」「いつまでやってくれるのかな」といった不安の声も聞きます。そんな声を聞くと、それぞれの日常を取り戻すまで長く支え続けることが必要なのかなと。皆さんに求められる限り続けていけたらいいなというふうに思っております。
最後に、今村より寄付者の方々に向けてメッセージを送りました。
実はハタチ基金は、東北の子どもたちのためになることを続けていく方法を毎年悩んでいます。そんな中で、現地で必死に支援を続ける団体の皆さん、そしてそれを支えてくださる寄付者の皆さんの存在が本当に励みになっています。残りの活動期間が7年となりましたが、とにかくやりきりたいと思っています。皆さんと一緒に歩んでいければと思っていますので、改めて今後ともよろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
活動報告会に参加してくださった方々の声
〇大変貴重なお話を聞けて満足しています。
〇ずっと寄付をしてきましたが、活動報告会の参加は今回が初めて。リアルな話を聞けてよかったです。〇皆さんの活動が知れてよかったです。
ご参加いただきありがとうございました!