
原発事故で一時避難を余儀なくされた南相馬市で、震災直後から子どもたちのために活動を続けてきた「NPO法人トイボックス」。現在は、児童クラブ、保育園、子育て支援事業、居場所支援事業等で子どもたちを支え、一時的な復興支援ではなく地域に根ざした持続可能な子ども支援を行っています。
トイボックス 震災復興支援部の佐藤 勇介さんに、子育て家庭を取り巻く課題や子どもたちの状況について伺いました。

NPO法人トイボックス 震災復興支援部 佐藤 勇介さん
福島県南相馬市出身。子どもと接することが好きで、地域の子どもたちとの交流を深め、居場所づくりを一緒に行いたいと考え、2022年からトイボックスで働く。現在は、南相馬市原町区にある「放課後児童クラブ 錦町児童クラブ」と、子どもや若者が過ごす第三の場所「原町リトリート」のプロジェクトマネージャーを担当。
長期的な避難を経験したかつての子どもたちが 子育て世代になってからの課題
東日本大震災以降、トイボックスは、「行政の制度を使って安心を取り戻す」ことを目指して活動をしてきました。現在運営している、4つの事業(錦町児童クラブ、けやき児童クラブ、原町リトリート、原町にこにこ保育園)も、制度の中で実現してきた支援です。一方で、支援が必要でも行政から認定されない子どもは、学校と家庭以外に居場所がなく、行かせたくても行かせられる場所がない状況にあります。
また、学童に通う子どもたちの中には、発達面・愛着面での課題を抱える子が増えている印象があります。その背景には「震災後の子育て」が影響しているのではないかと考えています。津波や原発事故からの避難の長期化で、人とのつながりや安心できる大人の存在を失い、地域で育つ経験がないまま大人になった世代が、今親となっています。どのように子どもと関われば良いのかわからない子育て世帯が孤立しています。
学童は小学生までしか利用できず、中学生以上は支援のはしごが外され、居場所も、専門支援も一気になくなります。こうした子どもや若者たちをどのように見守っていくのかが今後の課題の一つとなっています。
地域の子どもも大人も一緒に 「キッズフェスタ」開催
そんな中、子どもたちに様々な体験の機会を提供し、子どもたちを見守る大人の輪も育てていきたいと開催した「キッズフェスタ」。ハタチ基金の助成のおかげで、2025年も開催することができました。


地域の子どもたちが集い、とても楽しそうにワークショップや工作などに参加していました。「また来たい!」「楽しかった!」と言ってくれる子どももいて、その声が私たち支援者の励みになっています。
また、イベント開催後、居場所事業に問い合わせがあったり、利用者が増えるなど、少しずつではありますが、必要とする親たちに支援を届けられる機会が広まっています。年に1度の開催ですが、これからも続けていきたいと思います。
卒業後も「一人にしない」 地域で育てていく仕組みづくり
これまでトイボックスは、「制度を活用して運営する団体」でしたが、今後は「地域の育ちを再設計する存在」へと進んでいきたいです。
まず、放課後等デイサービスの立ち上げを行い、専門的な個別支援が必要な子どもに、確実に届く支援を提供。学童では支えきれなかった子どもたちを受け止めたいと考えています。
また、小学校で途切れてしまっていた支援を、終わらせないための施策を考えています。その一つ、中高校生への支援(ユースセンター構想)では、思春期・孤立・自己否定を抱える年代の居場所をつくることを目指しています。問題が起きてから対応するのではなく、孤立する前に関われる場をつくっていきたいです。
さらに、卒業後、その先の社会につなぐ支援(就労支援)を行い、地域で役割を持って生きられる仕組みづくりを進めてまいります。
すべての子どもに、第3の居場所があるまち
私たちが目指しているまちの姿は、「すべての子どもに、第3の居場所があるまち」となることです。支援が必要な子どもには、きちんと専門的なサポートが届くまち。小学校で終わらず、中学、高校、そして社会に出るところまで、人とのつながりが途切れないまちとなることが目標です。
そのためにも、支える大人を増やしていくことも必要です。先日、南相馬市の児童クラブの支援員を対象とした研修会を、トイボックス主催で開催しました。
個別支援ができる場所や人手、知識の共有はまだまだ不足しています。支援員同士の交流の機会が少ない中で、このような活動ができたことはとてもよかったと思います。
震災から15年が経ち、インフラは戻り、制度も整いました。一方で、「人の育ち」は、まだ回復しきっていません。
震災で壊れてしまった、「人が人を育てる循環」をつくりなおす取り組みを、今後も継続して行っていきます。ご支援のほどよろしくお願いいたします。





